ストレッチシリーズの5回目、2022年内ラストのブログは、静的ストレッチが生活習慣病予防にも有効であるとの研究をいくつか紹介します。
柔軟性の低下は加齢に伴う大動脈硬化の進行と関連
身体が柔らかい人の方が血管も柔らかいことは、複数の研究で明らかにされています。
ここでは日本人の成人男女・合計305人( 49.6 ± 9.5歳)を対象とした5年間の縦断的研究に注目します。
結果は右図の通り、柔軟性が低い人のグループの方が、加齢性大動脈硬化症がより大きく進行している値が得られました。
【図】 柔軟性レベル全体の頸動脈大腿脈波伝播速度 (ΔcfPWV) の年間変化率の粗値と調整値。データ (調整済みモデル) は、ベースラインの年齢、体重、体脂肪、SBP、HR、cfPWV、最大酸素摂取量、適度な身体活動時間、激しい身体活動時間、および性別について調整されている。データは平均 ± 標準誤差として表示。* P < 0.05 対高柔軟性グループ。
この研究は、柔軟性の低下は加齢に伴う大動脈硬化の増加に関連していることを示しています。
ストレッチは、加齢に伴う大動脈硬化を防ぐための効果的な手段である可能性があるといえるでしょう。
Gando Y, Murakami H, Yamamoto K, Kawakami R, Ohno H, Sawada SS, Miyatake N, Miyachi M. Greater Progression of Age-Related Aortic Stiffening in Adults with Poor Trunk Flexibility: A 5-Year Longitudinal Study. Front Physiol. 2017 Jun 30;8:454. doi: 10.3389/fphys.2017.00454. PMID: 28713284; PMCID: PMC5491599.
ストレッチは、血糖値を下げる効果も期待できる
2型糖尿病の患者50人(平均年齢50.7 ± 4.8歳)を対象とした研究では、20分の受動的な静的ストレッチよって血糖値が直後に大幅に減少し、血糖値が減少する効果は1時間後まで継続するという調査結果が示されました。
Taheri N, Mohammadi HK, Ardakani GJ, Heshmatipour M. The effects of passive stretching on the blood glucose levels of patients with type 2 diabetes. J Bodyw Mov Ther. 2019 Apr;23(2):394-398. doi: 10.1016/j.jbmt.2018.02.009. Epub 2018 Feb 12. PMID: 31103126.
また2型糖尿病の成人男性22人を対象とした研究でも、受動的な静的ストレッチが血糖値を下げるのに役立つ運動の代替となる可能性を示唆しています。
Nelson AG, Kokkonen J, Arnall DA. Twenty minutes of passive stretching lowers glucose levels in an at-risk population: an experimental study. J Physiother. 2011;57(3):173-8. doi: 10.1016/S1836-9553(11)70038-8. PMID: 21843832.
動脈硬化も高血糖症も、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの発症リスクを高める可能性があります。予防が肝心です。
毎日20分程度のストレッチを、無理なく楽しく気持ちよく続けて参りましょう。