シリーズ最終回となるこむら返り(有痛性筋攣縮)の科学。
今回は、図らずも発症してしまった時の対処法をお伝えします。
通常であれば症状は、数分で治まるケースがほとんど。
ですが、少しでも早く痛みや不快感を緩和したいと思います。
収束させる鍵は、筋紡錘と運動ニューロンの活動性を減らすことにあります。
対処法①ストレッチング
筋収縮が生じた筋肉を他動的に伸ばすことで、ゴルジ腱器官を刺激。脊髄の抑制神経を介して、運動ニューロンの活動性を抑制して、最終的に筋攣縮を解消させます。
具体的には、
つった方の足先をつかんで、ゆっくりと手前に倒し、ふくらはぎの筋肉を伸ばします。
自分で行えない時は、足の裏を自分の体に向かって押してもらいましょう。
壁を両手で強く押して、ふくらはぎを伸ばす動作もいいでしょう。
ただ、運動による筋疲労が著しい場合、ゴルジ腱器官の反射が抑制あるいは全廃されている可能性があります。
ですので、ストレッチングには反応しないケースもあります。
対処法②立つこと・歩くこと
特に長距離を走った後、長時間運動をした後は、しばらく歩き回ることが大事です。
発症したら瞬時に立ち上がり、やさしく動くことで、筋紡錘をリセットできます。
最初は激しい痛みが伴いますが、とても効果的です。
別の話にはなりますが、耐久系の運動を終えてすぐ、寝転がったり、しゃがみこんだりして動きを止めると、低血圧症を起こす場合があります。
この低血圧症を防ぐうえでも、運動後に立つこと・歩くことは有効です。
対処法③求心性の刺激を与えること
求心性の刺激とは、広義では身体の外側部分にある感覚器官(皮膚、眼、耳、舌、鼻)に対する働きかけを指します。
受容体から中枢神経系に向かって感覚インパルスを運び、反応の協調において脳を助けます。
ここでは皮膚への刺激をさし、具体的には下記のような手法があります。
マッサージ
競技直後に行うと予防にも効果的です。
コールドスプレーや氷による冷却
反射抑制により運動ニューロンの活動性を低下させます。
鍼
中脳や脊髄で神経化学物質が放出され、運動ニューロン活動が調節されます。
その他、低周波数(30Hz以下)を用いた電気的な刺激を、痛みに関連するデルマトーム(=皮膚分節といい感覚神経の分布領域)に与えることで、筋攣縮が解除される可能性も示されています。
こむら返り(有痛性筋攣縮)は肉離れとは別物ですが、頻繁に発症すると結果的に筋肉を傷めることにつながりかねません。
起こさないよう努めること、起きたら正しく対処すること、そして何度も繰り返すようなら一度、スポーツ専門医などに相談するのが安心です。
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