「アキレス腱症」は、その名の通りアキレス腱の周辺(踵骨付着部から数cm)部位に、痛みを生じるスポーツ障害です。
運動による過負荷や加齢などによるアキレス腱そのものの変性が主な原因とされていますが、シーズン初めの朝晩など寒冷な環境で運動することも要因の一つとされています。
そもそもアキレス腱は血流が乏しくダメージを受けた組織を修復する機能は高くありません。細かな断裂が十分に修復されないまま繰り返され、痛みや腫れを引き起こします。
初期段階ではジャンプの着地やターン、スタート時など痛みは一時的です。けれど症状が進むと運動中はもとより普通に歩いても痛みを感じるようになります。
痛みが慢性化したり、再発したり、治療が長引く患者さんも少なくありません。
他のスポーツ障害同様まずは予防に努めること、もし痛みを覚えたら早い段階で治療することが重要です。
過去記事もぜひご一読ください。
治療は運動療法を中心とした保存療法が基本となります。
今回は「British Journal of Sports Medicine」で紹介された「オランダにおけるアキレス腱症の治療方針のガイドライン」※を紹介します。
左の図は、ガイドラインで提案された運動療法のフローチャートです。
① アイソトニック・トレーニング(等張性収縮運動、常に一定の抵抗が筋肉に掛かった状態で筋肉を伸び縮みさせるトレーニング) 15回×4セット
参考動画
もし①で痛みを覚えたら(10段階評価で5以上)
⓪アイソメトリック・トレーニング(等尺性収縮運動、筋肉を伸縮させずに一定の姿勢をキープして負荷をかけるトレーニング) 45秒×5セット
参考動画
もし①で痛みがなければ(10段階評価で5以下)
②トレーニングに重量を追加する 6回×4セット
参考動画
もし②で痛みがなければ(10段階評価で5以下)
③プライオメトリック・トレーニング(筋肉の急激な伸張を繰り返すことにより、筋収縮速度を高め、瞬発力を鍛えるトレーニング)
参考動画
もし③で痛みがなければ 競技に復帰という流れです。
論文では、この運動療法によってアキレス腱症を患った選手の約85%は復帰可能で、12週間程度の継続が好ましいとしています。
ただし12週間で改善がみられない場合は、注射療法などの必要性を説いています。
参考になれば幸いです。
次回は足底腱膜炎を取り上げます。
<参考文献>
※ de Vos R, van der Vlist AC, Zwerver J, et alDutch multidisciplinary guideline on Achilles tendinopathyBritish Journal of Sports Medicine 2021;55:1125-1134.