新年度が始まり、北海道内でも屋外でスポーツに取り組める環境が整ってきました。
前回に続きスポーツのオンシーズン始めに注意が必要な「足首の捻挫」をテーマに、治療と予防についてご紹介いたします。
研修会「ジュニア期に起こりやすいケガ」で発表した内容ですが、全ての世代への注意喚起となれば幸いです。
治療について
足首の捻挫は損傷の程度に応じておおよそ
3段階に区分され、各段階に応じた治療が行われます。
捻挫をはじめスポーツ障害を負った選手からは、「何日くらいで復帰できますか?」という声を多く聞きます。
右の通り比較的、程度の軽いⅠ度においても運動再開まで数週間を要します。
また靭帯が完全に断裂したⅢ度では、2カ月は運動を休止することになります。
これらはあくまで目安であり、実際の復帰までにかかる期間はケースバイケース。
ですがどのようなケースにおいても、初期の段階で専門医の診断・治療を受け、運動休止するよう言われた期間は焦らずきちんと休むことが、結果的に最短での復帰につながります。
予防につながるキーワード 足首の柔軟性
大好きな競技の練習にも大会にも参加できないのは、年齢に関わらず全スポーツ選手にとって悩ましいことです。 そうした状況に陥らないための予防策として参考になりそうな論文を調べたところ、捻挫と柔軟性の関連性を裏づける研究※1にいくつか行き当たりました。
一方で関節の過可動性が高すぎる場合は関節外傷などの損傷発生が高まると指摘する研究※2もあります。
上記をはじめとする過去の研究をもとに、身体の柔らかさとスポーツ外傷の関係を明らかにした研究※3では、身体は硬すぎても柔らかすぎてもケガにつながりやすく、予防に重要な点は「関節弛緩性を生じない範囲で柔軟性の向上」と結論づけています。同研究ではストレッチの有意義性を提示しています。
以上から考える足首の捻挫の予防策として、
運動前のウォーミングアップ、特に足首の柔軟性を適度に高める動的ストレッチ
受傷しやすい関節まわりの筋肉やバランス感覚を鍛えるトレーニング
再発予防のためのテーピングやサポーター
を推奨します。
終わりに足首捻挫の予防トレーニングの参考動画を紹介します。
本格的な競技シーズンに入る前から、取り組んでいただければ幸いです。
※1 一例)某甲子園出場高校の高校野球選手におけるスポーツ障害と身体機能の関連性 ―スポーツ現場における足部を含むスクリーニング評価の実用性― 私市 直人, 石谷 勇人, 多米 一矢, 川崎 智子, 小関 博久 専門リハビリテーション20 巻 (2021) 1 号
※2 一例)女子ジュニア新体操選手における関節弛緩性と筋柔軟性の関連性および外傷への影響について.姫野美鈴,古後晴基 理学療法さが,2016, 2: 45-49
※3 )身体の柔らかさはスポーツ障害・外傷の発生にどう影響するか? 相澤杏莉, 齋綾乃, 長井幸美, 堀井旺歩, 山田佳奈, 佐々木誠 理学療法科学 37(1):123–128,2022