「さっぽろジュニアアスリート」発掘・育成事業の公開研修「ジュニア期に起こりやすいケガ」の内容を抜粋紹介するシリーズ3回目は、踵の痛み「シーバー病(踵骨骨端症)」について取りあげます。
ジュニア選手のケガ予防①成長期の骨折で紹介した通り、成長期の子どもは元来ある骨の端に新しく骨になるための“成長軟骨”や“骨端核”が存在し、骨の強度が弱いという特徴があります。
また腱や筋の成長と骨の成長にアンバランスが生じやすく、アキレス腱や足裏の筋肉(足底筋膜)が硬くなる傾向があります。
このような状態で踵骨が、アキレス腱に伸ばされたり、地面からの衝撃を受けたり、足底腱膜に引っ張られたりすることで、踵の骨が剥がれて発症するのが「シーバー病」です。
発症しやすいのは、
7~12歳(特に10~12歳に多い)
ジャンプや走ることの多いスポーツ選手
偏平足や内反・外反足の傾向にある人 です。
症状としては、踵の腫れ、圧痛(押したときの痛み)、歩行時痛がみられます。
軽症のうちは踵が少し痛いくらいですが、重度になると痛みで踵をつけない(=つま先でしか歩けない)状態になりいます。
診断は、レントゲン検査で踵骨の剥がれを確認し触診を含め総合的に判断します。
治療については、まず踵に負担がかからないよう安静とします。
ヒールカップによる踵の保護、インソール(足底挿板:靴の中敷き)による土踏まずのサポートなど装具療法によって痛みの軽減を図ることも多いです。
同時に練習量の調整(=頻度や強度を減らす)ことも重要です。
定期的に痛みの程度と踵骨の回復を確認し、徐々に運動量を元のレベルに戻していきます。
スポーツに打ち込むジュニア選手にとって活動を休止したり、練習を減らしたりすることに抵抗を覚えるかと思います。けれど痛みを我慢して活動し続けてもベストな成果は出せませんし、悪化させてしまえば運動を制限する期間が長くなってしまいます。
発症直後の痛みが強い時期であっても、腹筋や背筋の筋トレやストレッチなど跳んだり跳ねたりしないトレーニングは可能です。
特にアキレス腱や足底腱膜のストレッチは予防効果も期待できるので、踵に痛みのないジュニア選手も積極的に行うと良いでしょう。
またシューズが足に合っていなかったり、履き方が悪かったりすることで、身体のクッション機能が正しく機能しないことがあります。
運動時にシューズの中で足が滑らないように靴紐をしっかり締める習慣を付けることも、唯一無二の大事な身体をつくるために重要なポイントです。
シューズ選びについては過去記事を参考にしていただければ幸いです。
成長期の子ども特有の痛みとして、一般的に成長痛がよく知られています。
これは診察上圧痛や腫脹など異常所見を認めず、X線検査においても異常を認めない場合の通称名です。
骨や筋肉に問題がなければ特に何もしなくて大丈夫ですが、安易に「成長痛だからそのうち治る」と決めつけて放置するのは大変に危険です。
早めに整形外科を受診し、治療が必要な疾病であるかないかの診断を医師に仰ぐことが、結果的に大切です。
次回は「オスグット病」を取り上げます。