「ジュニア期に起こりやすいケガ」をテーマとした研修会の内容を抜粋紹介するシリーズ2回目は「骨折の治療と予防」について取りあげます。
「①骨折 ジュニア期の特徴」で紹介した通り、ジュニア期の骨は再生能力が高く、多少ずれていても時間とともにずれが治ってゆくのが特徴です。
そのためジュニア期の骨折では保存治療(手術をしない治療)が頻繁に採用されます。
保存治療の症例
右上は脛骨(すねの骨)骨幹部(骨の中央部)の骨折はギブス固定によって治癒に至った症例です。
ギブス固定中は入浴などの日常生活や学校生活が不便になります。
手術治療の症例
骨のズレが大きかったり、骨折の部位が関節や骨端線(=成長軟骨)であったりするケースでは、手術治療を行います。
右下の3例をご参照ください。
この場合、成長中の骨に可能な限り無理が生じないようにズレを正し、骨折部位を金属板やネジ、ピン(鋼線)で固定します。
骨が修復すればネジやピンは外しますが、固定具除去の手術後にしばらくギブス固定を行うケースもあります。
骨折予防と早期回復のため 日常から骨量を増やし丈夫な骨づくりを
前回ご説明した通りジュニア期は身長が急速に伸びる時期で、女子は11歳、男子は13歳頃が成長のピークになります。
この時期に起こりがちな骨の急伸に伴う骨密度の低下を防ぐことが、骨折の予防と早期回復につながります。 「運動」と「栄養」で骨量を増やし、骨を強く保つことが重要です。
■運動によって骨が強くなる
運動によって骨に負荷がかかると骨芽細胞が活性化して、カルシウムが骨に沈着しやすくなります。逆に運動不足が続くと、骨からカルシウムが溶け出し骨が弱くなってしまいます。
しかし文部科学省がまとめた『令和4年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果』によると、小中学生の運動時間が数年間のうちに減少している一方で、テレビ・ゲーム・スマートフォンなどによる映像の視聴時間が増加している結果が出ています。
■一汁三菜のバランスの良い食事で骨を丈夫に
骨の成長に欠かせない代表的な栄養素の一つ「カルシウム」の摂取については、図の通りジュニア期の男女とも不足しているのが現状です。
丈夫な骨づくりに必要な栄養素はカルシウムだけではありません。
骨の材料となるタンパク質(コラーゲン)やマグネシウム、リン、カルシウムの吸収を助けるビタミンDやビタミンK、タンパク質の利用を促進するビタミンB6など、多くの栄養素が深く関わっています。
ですので、骨を強して骨折を防ぎ回復を早める食事の基本は「一日三食、一汁三菜バランスよく食べる」ことです。
かつ、できる範囲で上記の栄養素を積極的に摂ることを意識いただければと思います。
研修会では言及しませんでしたが、健やかな骨づくりの情報を述べた過去記事も
ご一読いただければ幸いです。次回は成長痛を取り上げます。