温熱環境での弊害を防ぐうえで有効な外部冷却
7月も下旬になり、身体が暑さにだいぶ慣れた頃かと思います。
けれど長時間、暑い環境の中で動いたり、直射日光を浴びたりしていると、体温は上昇・疲労は増加します。
また運動パフォーマンスや作業効率は低下し、さらに熱中症のリスクが高くなるので注意が必要です。
そうした弊害を防ぐうえで有効なのが身体を冷やすことです。
冷却方法には、前回お伝えしたアイスリレーに代表される内部冷却の他、身体を外から冷やす外部冷却があります。
今回は、外部冷却について紹介します。
外部冷却には、下記のような手法があり、冷却効果と実用性は下記にまとめた通りです。
身体冷却の注意点と応用法
■アイスバス(冷水浴)
冷水に全身を浸けるアイスバスは、冷却効率の高さやエルゴジェニック効果(運動パフォーマンスの向上)が科学的に証明されています。
<参考文献>
Bongers CC, et al: Cooling interventions for athletes: An overview of effectiveness, physiological mechanisms, and practical considerations. Temperature, 4(1): 60-78, 2017.
Choo HC, et al: Ergogenic effects of precooling with cold water immersion and ice ingestion: A meta-analysis. Eur J Sport Sci, 18(2):170-181.2017.
ただし通常の競技場や活動現場で、浴槽を配備するのは難しいでしょう。
合宿先や帰宅直後の自宅浴室などで、リカバリーを兼ねて行うのが現実的かと思います。
■アイスベスト・アイスパック ネッククーラー・手掌冷却
アイスベストは冷却材入りのウエアで、
ウォーミングアップ時の着用によって、運動中の過度な体温上昇や脱水を防ぎ、心循環系への負担や温熱感覚を改善します。
手掌冷却については、過去記事を参照ください。
アイスパックやネッククーラーも実用性の高い外部冷却方法で、これらを用いたプレクーリングは、持久性運動( 30~60 分)においてその有効性が高いことが証明されています。
<参考文献>
Arngrimsson SA, et al: Cooling vest worn during active warm-up improves 5-km run performance in the heat. J Appl Physiol, 96: 1867-1914, 2004.
注意点は、試合やレースの開始前に脚部など主動筋を運動に適した温度状態に整えること。
冷却後に再度ウォーミングアップを行なうなどの対処が必要です。
■送風
風を身体に当てることで、表皮の熱放散が促進されます。
温熱感覚や認知機能を整え、快適性をもたらすのに有効です。
首や腋の下など動脈が比較的浅い部分にスプレーを噴霧し、身体を濡らしながら送風すると体温低下率は大きく、深部体温を下げる効果が得られます。
屋内競技は空調が効き、直射日光による熱の影響を受けないため、過度な深部体温の上昇は起こりにくいと考えられています。
けれど実際には、屋内競技における熱中症が多く確認されています。
スポーツをしない一般の方もこれら冷却法を活用し、熱中症の予防に取り組んでいただければ幸いです。