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執筆者の写真院長 原 則行

暑さ対策③水分補給

体重の減少が2%を超えない範囲での水分補給が重要


今日から8月。いよいよ夏の暑さも本番となってまいりました。

この暑さの中でも、多くのアスリートがトレーニングに励んでいることと思います。


これまでにお伝えした通り、暑熱環境下で運動を行なうと、深部体温の上昇や心臓血管系へのストレス増加などの要因から、パフォーマンスが低下します。

それらに脱水が加わることで、状況はさらに悪化する可能性が高いです。


運動中の水分補給を計画的に行うことは、暑熱環境におけるパフォーマンスを左右する対策の一つです。


暑い中で運動をすると発汗によって体の水分が失われ体重が減少=脱水の状態になります。

発汗により減少した水分が十分に補なわれないと、脱水によって引き起こされる深部体温の上昇は避けることができません

また脱水により体重が 1%減少するごとに心拍数は約4~6 bpm増加し※1、疲労困憊までの時間が 28~37%短くなる、あるいはピークパワー能力が 12~17%減少するという反応が解明※2されています。

また体重が3~4%減少すると、筋力は約 2%、筋パワーは約 3%、さらに高強度持久力は 10%低下する※3という研究もあります。

<参考文献>
※1
Casa DJ, Stearns RL, Lopez RM, Ganio MS, McDermott BP, Yeargin SW, Yamamoto LM, Mazerolle SM, Roti MW, and Armstrong LE. Influence of hydration on physiological function and performance during trail running in the heat. J Athl Train 45: 147–156, 2010.
※2
Wingo JE, Ganio MS, and Cureton KJ. Cardiovascular drift during heat stress: Implications for exercise prescription. Exerc Sport Sci Rev 40: 88–94, 2012
※3
Judelson DA, Maresh CM, Anderson JM, Armstrong LE, Casa DJ, Kraemer WJ, and Volek JS. Hydration and muscular performance: Does fluid balance affect strength, power and high-intensity endurance? Sports Med 37: 907–921, 2007.

以上から、発汗による体重減少は2%未満に抑えることが推奨されています。

選手はそのための水分必要量を決定し、水分摂取計画を実践することが重要です。

正確な発汗量を推定するため、事前に試合当日に近い強度、類似の環境で 45~60分運動を行い、運動の前後に体重を測定します。

 

(運動前の体重kg運動後の体重kg-摂取した水分量kg)÷ 運動時間 × 試合時間

 

上の計算式から推定される発汗量をもとに、体重減少が60kgであれば1.2kg未満、50kgであれば1kg未満となるよう、水分補給量の試算し、計画を立てましょう。



水分補給はアイソトニック飲料で、低い温度が望ましい


アイソトニック(等張性)飲料とは、安静時の身体水分の成分と電解質濃度が等しい飲料のことです。

暑い中での運動は大量の発汗とともに電解質の損失が大きくなるため、水分と同時に電解質を適切に補えるアイソトニック飲料(スポーツドリンク)の摂取が重要になります。

ただし真水や既存のスポーツドリンクを薄めて飲むなどすると、適量の電解質が補えない可能性があります


電解質が不足した状態で水分のみを大量に摂取し、血液中のナトリウム濃度が低下することで「希釈性低ナトリウム血症」いわゆる水中毒を発症するケースもあります。

何を飲むか、どのくらいの量を飲むかについては、注意が必要です。

※「希釈性低ナトリウム血症」に関する詳細は、右ボタンをクリックし、過去記事を参照ください。


さらに、前回のアイスラリーの記事でもお伝えした通り、低温飲料を摂取することによって、深部体温の上昇を抑制し、パフォーマンスの低下を防ぐことが期待できます。

下記表は、暑熱環境下における飲料水の温度がパフォーマンス発揮や体温調節に与える影響を検討したものです。

基本的に温度の低い方が持久性パフォーマンス発揮に有利に働く傾向があるようです。


ただし冷たい飲料を一度に大量に摂取すると、消化器の不調を起こすこともあります。 マラソンレースの給水ポイントやサッカーやテニスなどの試合のブレイクタイムなど、運動中に冷たい飲料を摂取する場合は、複数回に分けて少量ずつ飲むと良いと思います。


一般の方も、喉が渇く前に低温飲料をこまめに飲むことを心がけることで、暑い夏を健やかに過ごしていただければと思います。


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