靴は足を保護し、時には足の運動機能を補佐する大切なギアです。
ですが選択が適切でないと、足はもちろん全身の健康に悪影響を及ぼすこともあります。
そこで足の健康と靴についての関連性を、Q&Aシリーズで解説して参ります。
今回から数回にわたってのテーマは「外反母趾」です。
Q.外反母趾になるのはハイヒールを履く女性だけ?
A.いいえ。 子どもから高齢者まで男性も女性もなりうる病気です。
外反母趾とは、母趾(=足の親指)の先が第2趾(=足の人差し指)の向きに変形した状態をいいます。
もともと親指は5~10°程は曲がっています。
その角度が15°以上になると外反母趾に該当し、角度が大きくなるほど重症度が上がっていきます。
放置していると母趾の付け根の関節が突出し腫れや痛みが出て、さらに悪化すると歩行に支障をきたすケースもあります。
一般的に「外反母趾になるのは、ハイヒールを愛用する女性」という認識があると思います。
けれど、実際には男性の患者さんも少なくありません。
また中には、到底ハイヒールを履かないであろう小学生や高齢者もおられます。
確かに、女性は関節の構造や骨を支える筋力が弱いため、女性の方が外反母趾になるリスクは高いですし、割合的には女性の方が多いです。
といっても誰にでも起こりうる病気だと理解しておきましょう。
そしてご自身で日ごろから足をチェックしておくことが大切です。
Q.外反母趾になるのは靴のせい?
A.いいえ。 靴だけではなく加齢による姿勢変化も原因の一つです。
もちろん外反母趾には靴が大きく関わっています。
原因としては靴が足の長さや幅に合っていないこと、甲の押さえが不十分で歩行時に足が前にすべることが考えられます。 ※靴の選び方については、次回以降にご案内します。
けれども靴だけが原因ではありません。 高齢者にみられる外反母趾の大半は、加齢による姿勢変化が原因であろうと思われます。
加齢変化などで姿勢が前傾気味になると、重心線が足部の前方の甲のあたりへと落ちていきます。
足の甲には中足骨(ちゅうそくこつ)とよばれる長い骨が5本あり、横アーチと呼ばれる足底カーブを形成しています。
先ほどの姿勢変化によって、重心線が中足趾節間関節部に至ると、横アーチがつぶれます。 そして中足骨と中足骨の間が広がった状態=開張足になります。 開張足では足指を曲げる動きが拇趾を外側へと引き出してしまうため、結果的に外反母趾になってしまうのです。
靴とは全く関係なく、前かがみの姿勢や横アーチのつぶれが、外反母趾を引き起こすことがあります。
ちなみに、重心線は足部の中央からやや後方、舟上骨のあたりに落ちるのが望ましいとされています。
ご自身の歩く姿勢を改めて見直し、正しい姿勢を心掛けると良いでしょう。
以上2つの理解が、外反母趾の予防や早期発見・治療につなげていければ幸いです。
次回は、幅や長さにゆとりのある靴と外反母趾の関係について話したいと思います。