骨や筋肉の健康と「食」の関連性について紹介するシリーズ5回目、最終回は「エネルギー高回転型の身体づくり」の話題に迫ります。
「食べる量が少ない」「運動量が少ない」「筋肉量が少ない」
という「エネルギー低回転型」の危険性
「食と整形外科②痩せと健康リスク」で触れた通り、日本は痩せ(BMI<18.5 kg/m2)の女性の割合が世界的にも高く、特に若い20代女性では約5人に1人が痩せに該当しています。
20代の痩せは貧血や月経異常などにつながるケースが多く、また高齢になってからの骨粗鬆症のリスクも高まります。
さらに順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンターの研究※1では、日本人の痩せた若年女性は標準体重者に比べて「耐糖能異常※2」の割合が顕著に高いことを明らかにしています。同研究の詳細は下記の動画をご参照ください。
同研究では、耐糖能異常の調査に加え、体組成・体力測定、食事内容や身体活動量に関するデータを収集。解析の結果、若年の痩せた女性は標準体重の女性に比べ、「食べる量が少ない」「運動量が少ない」「筋肉量が少ない」といった特徴がある点も明らかにしています。
食べ物からの摂取エネルギーも運動による消費エネルギーも少ない「エネルギー低回転型」の身体では、糖尿病や心血管障害の発症リスクが高まります。
しっかり食べてしっかり動いて
「エネルギー高回転型」の身体へ
エネルギー低回転型の方に重要なのは、まずしっかり動いてお腹を空かせ、しっかり食べて筋肉をつけるという生活習慣にシフトしいくことかと思います。
エネルギーを回転させればさせるほど健康になるというイメージを持って、取り組んでいただければと思います。
■しっかり食べる
痩せた女性に多いのが、パンや麺類などを少しだけ食べて空腹を満たすパターンです。これでは筋肉はつきません。
シリーズ④「日本型食生活」で紹介した通り、栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。またシリーズ③「朝食と身体能力」も参考にしていただき、朝食も大事にしていただければ幸いです。
■しっかり動く
とにかく少しでも動くことを意識すると良いと思います。例えば、
1階分だけでも階段を使う
少し遠い店へ買い物に行く
通勤や通学をあえて遠回りする
旅行や買い物など出かける機会を増やす
などなど。歩くとポイントが貯まるアプリや、歩いて遊ぶゲームなどスマホを利用するのもおススメです。
ご自身にあった楽しいやり方を見つけ、ぜひ習慣づけていってほしいです。
最後になりますが、健康的な食事・運動習慣によって人は幸福感が増すことを明らかにした研究※3もあります。
同研究では健康的な食事習慣(寝る前の食事を避けること、早食いを避けること)、運動習慣(歩行や掃除などの身体活動を毎日60分以上+息が弾み汗をかく程度の運動を週に60分以上)を継続することはフィジカルだけでなくメンタルも健康に導くとの見解を示唆しています。
しっかり食べてしっかり動く「エネルギー高回転型」の身体をつくり、心も健やかになりましょう。
※1 「Prevalence and features of impaired glucose tolerance in young underweight Japanese women」。〔J Clin Endocrinol Metab. 2021 Jan 29;dgab052〕
※2 耐糖能異常は主に肥満が原因で生じ、糖尿病や心血管障害のリスクとなることが知られている。
※3 Associations between lifestyle behaviour changes and the optimal well-being of middle-aged Japanese individuals. BioPsychoSocial medicine. 2021 Apr 01;15(1);8. doi: 10.1186/s13030-021-00210-5. Toshihiro Takao, Naoki Sumi, Yoshiyuki Yamanaka, Sohachi Fujimoto, Tomoari Kamada